北陸旅行2019~親不知海岸とのとじま水族館を巡る~

 ほっとくらぶは 2016 年から毎年 1 回、信州人憧れの海に行くバス旅行を実施しています。 第 4 回目となる今年は、新潟県糸魚川市の親不知海岸と、能登半島のとじま水族館を訪ねる旅行を実施しました。今回参加されるご家族は遠出が初めての方々でした。 

【1 日目】 8 月 31 日

 過去に旅行やイベントで天気が大きく崩れたことのないほっとくらぶ。今回も前日までぐずついた天気が続きましたが、当日の朝は青空が広がりました。

 長野県立こども病院に集合後、みんなで1台のバスに乗り込みました。参加者はゲスト(医療的ケアなどが必要な児童)が3名、そのご家族が7名、スタッフ・ボランティアが 10 名の総勢 20 名です。

 バスは毎回、リフト付きの観光バスを借りています。普通の観光バスは床の高さが大人の胸ぐらいのため、ゲストの乗降時に子ども用車椅子から降ろして抱きかかえ、狭い階段を上り下りしなければなりません。危険が伴う上に、本人の負担も大きいなど多くの懸念がありました。その点、リフト付きバスは車椅子ごとあっという間に乗り降りすることができるばかりか、車椅子の固定フックもあるので安心です。

 ただしリフト付きバスは長野県内でも 2 台と、台数が限られているため料金設定が高めです。また、故障に備えてもう一台を待機させておく必要があるとのことなので、できる限り早期に予約する必要があります。毎年、収支の見通しががたたないうちに予約する必要があり、不安を感じていましたが、今回は早くから多くの方々が実施に協力してくださったので、安心して予約することができました。 

リフト付きバス
リフト付きバス
リフト作動状況
リフト作動状況

出発、そして道の駅あらいへ

 9時頃にこども病院を出発したバスは、安曇野インターから長野道に入りました。ルートはゲストの負担も考えて、できる限り高速道路を使うようにしています。今回も長野道、 信越道、北陸道、能登自動車道と乗り継ぐルートにしました。

 ちなみに旅行ルートは数カ月前にスタッフが、できる限り下見をするようにしています。というのも行き当たりばったりでは安心して旅行が楽しめない上に、旅行の満足度が下がってしまう場合が多いためです。チェック項目は訪ねる場所のバリアフリールート状況や、エレベーター・通路の寸法、障害者用トイレの有無、お湯や水などが確保できる場所の確認、 ホテル・浴室の広さ、電源の位置などです。

 旅行の話に戻します。バスは自己紹介を兼ねた「私は誰でしょう」ゲーム(各自が書いた ヒントを参考にして誰かを当たる)を楽しんでいるうちに、10 時半頃、最初の休憩地、道の駅あらいに到着しました。 ここにはさまざまな飲食店や土産店が集まっています。めいめい好みの店で食事や買い物を楽しみました。また、医療的ケアが必要なゲストと医療スタッフが一緒に過ごし、その間、ご家族にゆっくりと食事を楽しむ時間も設けました

バスの車内 (後ろにはマットレスを敷くこともできます。)
バスの車内 (後ろにはマットレスを敷くこともできます。)

親不知海岸で海を楽しむ

 道の駅あらいを 12 時頃に出発したバスは、上越 JCT から北陸道に入りました。このあたりから進行方向右手に海が見えてきます。海の青さに旅行への期待がふくらむうちに、最初の目的地、親不知海岸に着きました。

 ほっとくらぶでは、遠くから海を眺めることだけで終わらせず、できる限り海岸線に近づき、ゲストが海にタッチダウンするようにしています。これは「できる限りみんなと同じ時間を過ごす、経験をする」ことを大切にしているためです。安全を確保した上で、「障害や病気があるからあきらめる」という選択肢を、できる限り減らしたいと考えています。 

 今回もゲストはバスから降りて、みんなと一緒に海岸へと向かいました。海水浴シーズン後の親不知海岸は割とすいていますが、懸念点がありました。それは石が多くて足場の悪い海岸が続くことです。車椅子に医療機材を載せているゲストもいるので、極力衝撃を避ける必要があります。そこで考えたのが荷物運搬用ベルトを車椅子に掛けてゲストごとかつぐ方法です。車椅子とゲストは荷物も含めて大人一人程度とそれなりの重さになりますが、前 2 名、後ろ 2 名で担ぐことで重さを分散させながら、なるべく揺らさないようにして波打ち際に向かいました。

 海辺では潮風を感じたり、記念写真を撮ったり、貝殻や小石を拾ったりして過ごしました。また、スタッフの一人がゲストを抱っこして、海にタッチダウンすることにも挑戦しました。ほっとくらぶにとっては毎回のことですが、中には「生まれて初めて海に連れて来られた。そして海に触れた。」というお子さんも。「家族だけでは海岸までは無理とあきらめていつも遠くから見るだけで、自分達だけでは無理と思っていた事が、皆さんの力で海に触れられました。感動です。」という感想をいただきました。     

 

親不知海岸の亀さんの前でパチリ!

宿泊は和倉温泉 

 14 時頃に親不知海岸を出発し、能登半島・和倉温泉の旅館に向かいます。何をしていても目的地に着くのがバス旅行のいいところです。

 ほっとくらぶは旅館で過ごす時間を楽しむことも大切な目的と考えて、毎回、スケジュー ルのゆとりを大切にしています。今回の宿、「のと楽」に着いたのも 16 時半頃と早い時間でした。「のと楽」は七尾湾が一望できる海際、広い空を背景にしてすくっと建つ老舗のリゾート旅館です。ちなみに宿は毎回、立地や眺め、ゲストが入るお風呂の広さ、バリアフリー度、料金とのバランスなどを考えて決めています

 食事までの約2時間は自由時間にしました。温泉で手足を伸ばす、旅館内を探検する、海辺を散歩する、日課のジョギングを楽しむなど、思い思いのひとときが過ごせたようです。その間に医療的ケアが濃厚なゲストさんも、医療スタッフの介助でゆっくりと入浴して、ご家族は温泉を楽しむことができました。 

ゲストのお風呂もオーシャンビュー
ゲストのお風呂もオーシャンビュー
部屋からの眺め
部屋からの眺め

みんなで楽しんだ食事

 

 夕食はみんなが一部屋に集まって楽しみました。コースの肉・魚料理、お造りや、バイキングのブッフェ料理を好みで楽しむスタイルです。ゲストさんは特別に用意してもらった お膳の料理をミキサーにかけて注入したりして味わいました。

 慌ただしい日々を過ごすゲストご家族にとって、旅先の温泉でくつろいだ後に浴衣に着替えて、ゆっくりと飲食を楽しむ時間は生涯に数えるほど。そのためか自然な笑顔がこぼれます。その様子を見るスタッフも嬉しくなる。 夕食はそんなひとときになりました。

 また、ゲストさんのご家族同士や、参加者全員と語り合う貴重な時間にもな り、歓談混じりの食事は約 2 時間にわたりました。その後、海岸沿いの遊歩道で花火を楽し むなど、能登の夜を存分に楽しんでから床に着きました。

【2日目】 9月1日 

 のとじま水族館 

 2 日目の朝、各部屋にはオーシャンビューの窓から朝日が降り注ぎました。ほっとくらぶのイベントでは天気が大きく崩れない記録はまだまだ続いています。 

 バイキングの朝食をゆっくりと楽しんだ後、9時頃にバスに乗り込みました。行き先は和倉温泉の対岸、能登島にあるのとじま水族館です。波が日差しにきらめく海沿いの道を進むバスは、あっという間に水族館に着きました。 

 まず全員で向かったのはイルカショーです。海を背景にしたプールで飛び跳ねるイルカに、みんなの視線が釘付けです。その後、12 時の集合時間まで、自由に水族館見学を楽しみました。 

 のとじま水族館では多種の魚介類をはじめ、ジンベエザメ、ペンギン、ラッコ、アシカなどが観察できます。夏休みの最終日にあたるのでやや混雑していましたが、太平洋側の水族館のように人垣で水槽が見えないということはありません。みんなたっぷりと海の生き物と過ごす時間を楽しむことができたようです。 

道の駅のとじま経由で帰路へ 

 のとじま水族館を出発したのは 12 時頃。いよいよ旅行のフィナーレです。その前に道の駅のとじまに立ち寄り、食事をしたりお土産を買ったりするなど、旅行を締めくくる時間を過ごした後、バスは昨日のルートを逆にたどり、17 時半頃、無事にこども病院に着きました。 

 

 家族だけではゆっくりと寛げず、医療的ケアがあるからこそ不安だけど、医療スタッフも同行し安心して遠出ができる家族旅行支援のほっとくらぶで、皆さんが一緒に居て下さることで、外に出る勇気が持てた。遠出が不安だったけど、安心して子供と一緒に楽しめた。とご家族からの言葉をいただき、スタッフ全員がまた次も企画しなければと思います。 

 心からほっとできる旅行として今回センチュリーライド様、安曇野市様からの支援により企画、実施が出来ましたことを心より感謝しております。ありがとうございました。 (代表 斉藤雅恵)